過去の克服

ヒトラー後のドイツ

石田勇治 / 白水社 / 2002/06/10

★★★★★

非常に面白い

 ドイツの「過去の克服」(Vergangenhitsbewaeltigung)についての時系列的な紹介。

 あとがきによると、本書のベースには、著者が「ヴァイツゼッカー大統領の終戦四〇周年記念演説をきっかけに、西ドイツを理想化する傾向が突然あらわれた」ことに困惑を覚えたが、「ちょうど終戦五〇終年ごろから、これとはまったく逆の傾向が目立つようになった」ことにもっと困惑を感じたという事情がある。そういうわけで、前者に対しては、戦後ドイツの「過去の克服」にいろいろと紆余曲折があったことを示し、後者に対しては、この「過去の克服」の背後にはしっかりとした積み重ねがあることを示すという作りになっている。

 豊富な情報と冷静な記述の詰まった良い本だった。上記のどちらの陣営に属する人も、読めば得るところがあると思う。

 なお、著者は日本の問題についての言及を意図的に避けている。しかし、日本人読者は随所で日本での事情を連想し、比較対照することだろう。こうやって通史を読むと、ドイツ(特に西ドイツ)と日本のたどった道には共通点が少なくないということがわかる。そして私は、両者の間に違いが生じたことの根本の原因は、結局は「イスラエルが建国され、アメリカがそれをバックアップしたこと」と「中国が共産主義国家となり、アメリカがそれを牽制したこと」にあるという印象を受けた。これらのファクターは1990年代以降から変化しつつあり、今後は、従来の「戦後のドイツと日本」観もそれを受けて大きく変わる可能性がある。日本が抱える歴史問題については『いま、歴史問題にどう取り組むか』の項を参照。

2002/6/17

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