「数」の日本史

われわれは数とどう付き合ってきたか

伊達宗行 / 日本経済新聞社 / 2002/06/03

★★★★

面白くインフォーマティブ

 著者は物性物理学を専門とする人。本書は、数/数学の観点から日本史を眺める本である。縄文時代から説き起こし、昨今の「学力低下」問題に触れて21世紀の数学教育にまで言及する野心的な本だった。

 私にとって特に興味深かったのは古代から中世にかけての話だった。租税計算や文芸作品に見られる数遊びなどは、話としては聞くけれども、理工系の人から語られるのを聞くと新鮮に感じる。著者は、数を扱ってきた太古からの日本人たちに親近感を抱いており、その人々の側にいくぶん身を寄せて語っている。中立的な数学史/日本史ではない。

 もちろん和算、西洋数学の流入、戦後の数学教育改革などのスタンダードな話題も扱っている。「学力低下」の問題と、未来へとつながる話については、普通の理科系の学力低下論者の立場をとっている。ただ、太古からの日本社会を論じてきている本書に、この標準的な学力低下論とその対策法がどのように収まるのかがわかりにくい。それまでの日本史を踏まえると、こういう結論が導き出されるという論理の流れが、あまり明確でないように思われた。

 もちろん、歴史がこうだから、これに準じなくてはならない(またはそれを変えなくてはならない)という議論の運びには、一般にあまり説得力がないとはいいうる。

2002/6/28

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