首切り

Chasseurs de tetes

ミシェル・クレスピ / 早川書房 / 2002/07/31

★★★★

結末に不満あり

 2001年度のフランス推理小説大賞の受賞作。

 失業中の男が、就職斡旋会社の「地獄の研修」的な合宿に参加して巻き込まれるトラブルを描く。人里離れたホテルに十数人の男女が缶詰めにされ、テストとしてグループ課題を与えられる。主人公はこのテストでいい成績をとり、ライバルを蹴落とそうといろいろと画策する。

 ファウルズの『魔術師』を思い出させるような仕掛けに満ちた面白い着想で、「深読みのしすぎ」とか「マニピュレーション」とか「支配者への反逆」などのモチーフがうまく組み合わされている。また、このグループ課題を解くところがゲーム・プレイ小説(造語)の要素を持っていて、リアリティTVと同じ根の楽しさがある。実際、本書の3/4ぐらいまでは、これは大傑作ではないかと感じながら読み進めていた。

 しかし残念なことに、終盤が非常に凡庸なのだ。それまでは頭脳プレイによる駆け引きで引っ張ってきた物語が、いきなり生身の暴力によって解決されてしまう。この転換はサプライズとして意図されているのかもしれないが、私は単にもったいないと思っただけだった。そこまでの段階での期待が高くなりすぎていたということなのかもしれない。主人公が直面する数々の難問は知的に解くべき問題として提示されるので、それらが論理的に解かれるという古典的推理小説のような結末を期待していたところ、結局のところ論理的な解法は提示されなかったという不満を感じたのである。

 その点を除けば、キャラクターの配置、人物描写、主人公が投げ込まれる状況の設定などはいずれも一級品だと思う。実に残念。

2002/9/1

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