クライミング・フリー

Climbing Free: My Life in the Vertical World

リン・ヒル、グレッグ・チャイルド / 光文社 / 2002/07/30

★★★★★

素晴らしい自伝

 リン・ヒルはフリー・クライミングで有名なアメリカの登山家。名著『ビヨンド・リスク』にインタビューが収録されている。クライミング競技のテレビ番組の解説者としてときどき見かける。

 非常に素直な意味で「勇気づけられる」いい本だった。どのように勇気づけられたのかはよくわからないのだが、「人間はやっぱりしっかりと生きなくちゃならないね」というメッセージはしっかりと受け取った。要するに、きわめて好感の持てる自伝なのである。その人が女性である、登山家である、超優秀な革命的なクライマーであるというような属性はそれなりの意味を持つけれども、それらを度外視した「自伝」ジャンルの本として、本書は素晴らしい。

 登山関係の本としては、面白い話がいっぱい詰まっている。特に、クライマーが壁にとりついているときにどのような気持ちを抱くかという点での記述は、山野井泰史を題材にした『ソロ』という本が良かったのだが、本書は本人自らの証言であるだけに迫力がある。また、フリー・クライミングに関わる「クライマーの倫理」についての彼女の考え方も興味深い。クライミングにあたってどれほど「クリーン」に登るかという点についての彼女の考えは、非常に現実的かつ中庸である。これはまあ、フリー・クライミングの分野でつねに最先端にいたからこその余裕かもしれない。

2002/10/8

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