南の島に住みたい!

いのうえりえ / 東洋経済新報社 / 2002/08/15

宣伝本でないのに

 南の島に都会から移り住んだ人々を取材し、その苦労話を聞く。また、移住のための実践的なノウハウがある。なんでこんな本を買ったというと、私自身に南の島への憧れがあるからである。絶対に移住はしないけど。

 それにしてもこの本の文章はひどい。すべてのインタビューが、「島という場所には私たちが忘れて、置き去りにした人間として大切な「感覚」を呼び覚ましてくれる、不思議な効用があるのかもしれない」(46ページ)というような文章で書かれているのである。フリーライターの著者は、企業の宣伝文の文章を書きすぎて、何を宣伝しているわけでもないこんな本でもこんな文章しか書けなくなっているのかもしれない。

 世の中の書評や映画評にも、こういうタイプの文章をよく見かける。そして、こういう当たり障りのない、無意味な文を並べて無難にまとめた文章がプロフェッショナルな文章だと思い込んで、そんな制約がないWeb上の無償の文章で商業文の真似をしているサイトをときどき見かける。そんなことをしたらダメだ。文章は、人の思考に影響を与える。職業上、無意味な文章を大量生産しなくてはならない人のことはむしろ気の毒に思うべきだ。

2002/10/8

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