からくり民主主義

高橋秀実 / 草思社 / 2002/06/05

★★★★★

面白い

 著者はフリーのジャーナリストとのこと。著作を読むのはこれが初めて。

 主に戦後民主主義的な言説の対象となっている現場に足を運んで取材し、そのような言説を相対化するというルポルタージュである。1つ1つのセクションが短いのが不満なのだが、それを差し引いてもこれは滅法面白い。通底するテーマを乱暴にまとめてしまうと、「人間のしたたかさに焦点を当てることで、メディアに流通している構図を相対化する」ということになる。もちろんこのような仕事に意味があるのは、すでにメディアに流通している構図が存在しているからであり、本書はあくまでもオルタナティブなジャーナリズムというニッチにある。本書が面白いということを認めるとしても、混沌から強引にテーマを引き出して類型化してしまうメインストリームのジャーナリズムには、それなりの存在意義があるということは忘れるべきではないと思った。

 取り上げられているテーマは(以下、副題を引用)、「小さな親切運動」、「統一教会とマインドコントロール」、「世界遺産観光」、「諫早湾干拓問題」、「上九一色村オウム反対運動」、「沖縄米軍基地問題」、「若狭湾原発銀座」、「横山ノック知事セクハラ事件」、「富士山青木ヶ原樹海探訪」、「車椅子バスケットボール」。

 この中で、既存の構図がそれほど強固ではないテーマ、具体的には「小さな親切運動」、「世界遺産観光」、「富士山青木ヶ原樹海探訪」、「車椅子バスケットボール」が、ルポルタージュとして自立していて良い。

2002/10/8

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