蚊はなぜ人の血が好きなのか

Mosquito: A Natural History of Our Most Persistent and Deadly Foe

アンドリュー・スピールマン、マイケル・ド・アントニオ / ソニーマガジンズ / 2002/09/10

★★★★★

蚊と伝染病を巡る面白い本

 著者のアンドリュー・スピールマンは、蚊と蚊が媒介する伝染病・感染症の権威。マイケル・ド・アントニオはジャーナリスト。本書は、蚊の生態学と行動学から、伝染病の病理学と公衆衛生学の歴史までの広い範囲をカバーする啓蒙書。

 アメリカでは、西ナイル熱の発生のために、このところ蚊に対する関心が高まっているようだ。本書は300ページほどの薄い本だが、その内容は実に濃く、特に近代以降に行われた人間と蚊との戦いについての記述が充実していて面白かった。

 なお、著者はDDTの全面的な使用禁止に反対の立場をとっている。さまざまな薬品が開発されたいまでも、DDTは数多くの利点を持っており、特に最初の駆除の道具としては非常に優れているという。以下、219ページより引用。

……しかしまず最初にマラチオン、セビン、ペルメトリンといった薬剤で攻撃された蚊は、より幅広い抵抗性を獲得してしまい、DDTからもある程度、身を護れるようになります。またこうした代替薬を用いた噴霧プログラムは、DDTを用いたプログラムに比べると、およそ三倍の経費がかかります。逆にいうと正しく使いさえすれば、DDTは今も、マラリア対策にじゅうぶん貢献しうる薬品なのです。
二〇〇〇年、DDTは国連環境計画の協定により、世界全域で非合法化される寸前でした。あやうく残留性有機汚染物質(POP)のひとつに分類されるところだったのです。しかし二〇〇〇年十二月に南アフリカで開かれた協定会議で、DDTを禁止の対象から除外することが合意されました。この薬は現在、中国とインドでしか製造されておらず、抗マラリア以外の目的で入手することもできません。DDTの地位をめぐるこの最近の戦いは実に熾烈なものでしたが、その結果も世界中の人々の健康保全にとって、実に大きな意味をもっていました。

2002/10/12

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