戦争と経済と幸福と

末永徹 / 文藝春秋 / 2002/09/30

★★

いまどき珍しい西洋至上主義

 著者は、外資系証券会社のトレーダーだった人。

 古今東西の大国の興亡のケースを用いて日本の現状を論じる、年齢の割りにはずいぶんと枯れた感じのするエッセイ集であった。その基盤には個人の幸福重視と自由主義があり、いまどき珍しい西洋文明至上主義である。たとえば著者は、「韓国は近い国か」と題されたセクション(136ページ)で、日本人はワールドカップで日本が敗退したら次は韓国を応援するのが常識だと思っているが、著者自身はハングルはまったく読めないし、韓国の文化にも詳しくないから、ずっとヨーロッパ諸国の方を近く感じると述べる。これは多くの人が抱く実感ではあるだろうが、いまのインテリの口からはなかなか出てこない思い切った発言だ。私自身、この隣国のことをほとんど知らないままここまで来てしまったのがまずいという思いで、韓国と北朝鮮に関する本を多く読んでいるわけで、さすがに「私は西洋史だけ知ってれば満足です。ちなみに十字軍遠征の勝者はやっぱりヨーロッパなんです。いまの欧米とイスラム諸国の状況を見ればわかるでしょ?」というようなことを口にする気にはなれない。

2002/10/12

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