夢なき者たちの絆

Dream of Wolves, A

マイクル・C・ホワイト / 扶桑社 / 2002/09/30

★★★★

泣けるんだが

 著者のマイクル・C・ホワイトの処女作は『兄弟の血』というタイトルで翻訳出版されている(未読)。大学で英文学と創作を教えているとのこと。

 老年にさしかかった男を主人公とする回復の物語。主人公はノースカロライナの辺境の地に住む産婦人科医兼検死官。内縁の夫を散弾銃で殺害したネイティブ・アメリカンの妻から赤ん坊を託され、その世話をするうちに、それまで閉じていた彼の世界が開いていくという話である。ミステリとしての要素は弱く、普通の人間を主人公にしたハードボイルドの回復物語といった方がいい。

 非常にうまく書かれているのだが、正直言ってこのタイプのものはもうあまり読みたくない。著者が大学教師であるという情報のせいもあるのかもしれないが、あまりにもうまく作られていて人工的な感じを受けるのである。これは男性向けロマンスの定型パターンに文学的な表現と文体を組み合わせた工業製品だ。私は、読書メモと映画メモのラインナップからわかるように、工業製品自体を嫌ってはいない。私が嫌いなのは、工業製品であるのに、「文学作品」の振りをするために効かせるいろんな小技である。

 完成度は高い。読み終わってから振り返ると、こいつフローチャートを完成させてから執筆に着手したなと思わせる出来映えである。回復の物語/ロマンスであるために、いろんな問題があまりに主人公に都合よく解決する点が気になるけれども、考えてみれば「貧しい少女が王子様と結婚しました」という物語も私は許すのだから、老医師が幸せになる物語も許すべきだろう。

2002/10/12

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