哲学の道場

中島義道 / 筑摩書房 / 98/06/20

★★★

哲学が難しいということを説いた本

 「やさしい哲学」への反論として、哲学は難しいということを強調する本。著者自らの哲学修行を回顧しながら、どれだけ大変かということを述べる。

 最後の方の「哲学書の読み方の修行」では、『純粋理性批判』の一節を取り上げて、いかに読むのが難しいかを説明している。しかしこれを読んでわかることは、(1)悪い翻訳が出回っている、(2)大昔にドイツ語で書かれた本をいま日本語で読むことの意味がよくわからない、(3)『純粋理性批判』はpoorly-writtenな本である、(4)こういうものを苦労して読むということと、著者がいう「哲学研究者」はどういう関係にあるのかわからない、などだ。実際、このセクションが、著者の「哲学研究者」に対する批判の一部であるならば非常によくわかるんだが、そうでないところが、この人はこれを自分の内部の中でどう処理しているんだろうかという疑問を抱かせる。その他の、業界回顧談風なところも含めて、この本はかなり反動的である。

 世の中の人を哲学という病気から守るための戦略的な、反面教師的な意味合いを持たせた本ということであれば諒承するのだが。

1998/7/13

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