宇宙のエンドゲーム

生命と物質-永遠に繰り返される「終焉」のものがたり

Five Ages of the Universe, The

フレッド・アダムズ、グレッグ・ラフリン / 徳間書店 / 2002/07/31

★★★★★

ハードSFファンは必読

 原題の"The Five Ages of the Universe"は、本書が宇宙の生涯を「原始の時代」"Primordial Era"、「星たちが輝く時代」"Stelliferous Era"、「縮退の時代」"Degenerate Era"、「ブラックホールの時代」"Black Hole Era"、「暗黒の時代」"Dark Era"の5つの時代に分けて解説していることを示している。宇宙誕生からの経過年数の10の対数をとったものを「宇宙年」"cosmological decade"=ηとして、それぞれの期間は-50 < η < 5、6 < η < 14、15 < η < 39、40 < η < 100、η > 101である。要するに、最後の「暗黒の時代」は宇宙誕生から10の101乗年が経過した後に始まる。いま現在、宇宙は約100億歳、すなわち10宇宙年歳である。

 そういう、気の遠くなるような長い期間にわたる宇宙の進化を解説する啓蒙書。本書が発行された1999年以降も、宇宙論の分野ではいくつか重大な新発見があったそうだが、基本的な部分は変わっていないということらしい。

 思い返せば、高校生の頃の私は宇宙論が好きで、一般向けの本をいろいろと読んでいた。本書は、その頃とはスケールがぜんぜん違う話になっていた。私の勉強不足なのかもしれないが、「縮退の時代」以降の話なんて空想的なSFでしか読んだことがなかったのに、本書の半分以上がそこに割かれているのである。

 また本書では、各時代に存在しうる生命の形態について、SF的な思索を行っている。たとえば4章「ブラックホールの時代」の冒頭には、太陽の百万倍の体重を持ち、10の79乗年も生きてきた「ボブ」が、遠く離れた地で2つのブラックホールの衝突した結果として生じた重力放射のバーストを感知するという描写がある。いまのわれわれの宇宙については、こんな風に書かれている。

ボブの関心の対象は、完全に実用的なものにかぎられていたが、彼の種族には、最初の10^40年間の宇宙の特性、つまり「ビッグバン後のほとんど想像もできない短い瞬間の特性」を理解しようとする連中がいた。特に、流行っていたのが、電子が陽子や中性子と相互作用して、非常に複雑な構造ができていた可能性があるという大胆きわまりない推測だった。とうの昔に崩壊してしまったエキゾチックな短命の粒子である、陽子と中性子の存在は、当時の、冒険好きの物理学者たちによって、熱狂的に受け入れられたが、同時に、より保守的な立場から判断する人たちからは、「乱暴な憶測にすぎない」と非難された。

 (「当時の」は"contemporary"か?)。

 ダイソンの生命形態についてのスケーリング仮説、つまり「生き物のエネルギー使用率は、その生き物が生きている温度に比例する」という仮説を採用しているため、上記の生物にとっては、ビッグバンからの10^40年間は「想像もできない短い瞬間」であり、陽子と中性子は(すでに崩壊してしまった)エキゾチックな短命の粒子ということになる。

 まあ、こういうものはお遊びであり、記述のほとんどは真面目な内容である(それでもやはりSFに見えるのだけれども)。

2002/11/11

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