パイド・パイパー

自由への越境

Pied Piper

ネビル・シュート / 東京創元社 / 2002/02/22

★★★★★

感動的

 ネヴィル・シュートの1942年の作品"Pied Piper"は、以前に『さすらいの旅路』という邦題で出版されていたが、改訳・改題の上再版された。私は今回が初読となる。

 舞台は1940年。英国人の引退した老弁護士ジョン・ハワードは、休暇先のフランスの山村でドイツ軍侵攻のニュースを知る。彼は旅先で知り合った英国人から、2人の年端もいかない子供を本国に連れ帰ってくれと頼まれ、引き受ける。ところがドイツ軍はすでにフランスの奥深くにまで入ってきていて、交通機関が正常に動いておらず、一行は徒歩での脱出を試みざるをえなくなる。体のあちこちが痛む老人と、予測不可能な行動をとる子供たちを主人公とした脱出ものの冒険小説である。

 でまあ、とにかくかっこいい。60年前に書かれていたものなのだからいまさらではあるのだが、子供の予測不可能さをこれほどうまく活かしているものは初めて読んだと思う。

 なお、これに手を出したのは、このところ映画の『渚にて』(1959)とそのリメイクのTVムービー『エンド・オブ・ザ・ワールド』(2000)を見ていろいろと思うところがあったためである。IMDBの『エンド・オブ・ザ・ワールド』のユーザー・コメントには、「この作品がついにオーストラリア人の手に取り戻された」という趣旨の記事があって印象に残った。オーストラリア人にとって、『渚にて』は自国のものであるという意識があるようだ。ネヴィル・シュートは1899年に英国で生まれ、1949年にオーストラリアに移住した。訳者によるあとがきから、邦訳のある作品のリストを転載する。

 生涯に25編の作品を残したとのこと。邦訳されているものは、本書以外はオーストラリア時代の作品である。

2002/11/11

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