徹底討論 グローバリゼーション賛成/反対

Pour & contre La Mondialisation Liberale

スーザン・ジョージ、マーティン・ウルフ / 作品社 / 2002/11/20

★★★★

ある意味で奇書

 著者のスーザン・ジョージは『グローバル市場経済生き残り戦略』の人。パリに住み、「トランスナショナル研究所」(アムステルダム)と「グローバリゼーション観測所」(パリ)を往復する生活を送っているとのこと。ATTAC(市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション)の副代表。著者のもう1人のマーティン・ウルフは、元世界銀行エコノミストで、現在は『フィナンシャル・タイムズ』の編集委員・チーフコメンテーター。

 本書は英国において英語で行われた対談を、フランス語に訳してフランスで出版したものの邦訳版である。スーザン・ジョージの繰り広げる「グローバリゼーション批判」に対して、マーティン・ウルフが経済学者の立場からひどくまっとうな答えを返すという趣向。特に目新しいことはない。「グローバリゼーション批判」をやっているわりには、スーザン・ジョージが無知であるということがわかるというていどである。

 が、訳者あとがきを読んで驚いた(156ページ)。

経済学を専門としない私が言うのはおこがましいのを承知のうえで、もう一言付け加えさせてもらうなら、日本の左右の政治家や保守派の論客のなかで、スーザン・ジョージはともかく、マーティン・ウルフ程度の教養や認識でも、どれくらいの人間が持ちあわせているだろうか。

 繰り返しになるが、本書は、経済について無知なスーザン・ジョージが、自分のさまざまな主張の間違いを、マーティン・ウルフに正してもらっている本である。討論とかディベートと呼びうるレベルに達していないQ&A、「専門家に訊きました」という類いの企画だ。この本を読んで、いったいどこから「マーティン・ウルフ程度の教養や認識」という言葉が出てくるのか不可解である。

 もちろん、本書はフランスでも日本でも、スーザン・ジョージの陣営から出版されているわけで、これを出してもスーザン・ジョージの、また彼女が行っている活動のインテグリティに傷がつかないという判断が下されたことはたしかだ。専門家が素人との対話に関わることのリスクの大きさと啓蒙活動の無駄さをしみじみと感じさせる奇書である。反論のしかたの勉強にはなるかもしれないが、その反論をしても通じないということが実証済みでもあるという……

2003/1/6

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