アメリカがおかしくなっている

エンロンとワールドコム破綻の衝撃

大島春行、矢島敦視 / NHK出版 / 2002/10/30

★★★

中途半端だが、まあわかるにはわかる

 NHKスペシャルで放映されたものの単行本化ということらしい。2001年の暮れにエンロンが破綻し、2002年夏には同社の監査をやっていたアンダーセンが廃業に追い込まれた。本書はエンロンの破綻に至る流れを描くノンフィクションで、2002年夏にやはり破綻したワールドコムについての記述も少し入っている。

 タイトルからわかるように、「アメリカ型資本主義」などのキーワードに象徴されるシステムが異常を来したという見方に立っている。この読書メモを開始したのは1998年だが、当時はアメリカ経済が絶好調で、「ニューエコノミー」なるものが真面目に論じられていた。本書は、この時期のアメリカ経済の、少なくとも「株価至上主義による経営」が担っていた部分が、日本の1980年代末のバブル経済と非常によく似た形になっていたことを指摘している(ペーパー・カンパニーを使っての「飛ばし」、売り上げ至上主義に追い立てられた社員たちによる売り上げの水増し、証券アナリストによる株価の吊り上げなど)。特にエンロンを初めとする、不正経理を経由しての企業破綻は、あれほど賞讃されていたアメリカ型のコーポレート・ガバナンスがうまく機能しなかったケースだ。もちろん破綻していない企業が圧倒的多数なわけだが。

 おそらく人は、こういう企業がマーケットによって選別されて早めに破綻することが、アメリカ経済の強みであると言うだろう。株価をもとにした経営は、株価が下がれば破綻するのは当たり前のことである。問題なのは、監査法人、証券アナリスト、そして証券取引委員会といったチェック機関が有効に機能しなかったことだが、こうやって問題が明らかになれば、軌道修正も早く行えるはずだ。特にアンダーセンが追いつめられたことは大きい。

 細かい話については、将来、アメリカ人が本格的なノンフィクションを書いてくれるだろう。とりあえず一通りのことを知りたいという人にはお勧めする。

2003/1/6

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