シャングリラ病原体

Ice Age

ブライアン・フリーマントル / 新潮社 / 2003/03/01

★★★

あくまでもポリティカル・フィクション

 ブライアン・フリーマントルによるシリーズ外の疫学パニックもの。地球温暖化により、氷に封印されていた大昔の病原体が出てきて人類を襲う。

 近未来バイオSFというよりは、著者がこれまで多く書いてきたスパイものや警察ものの登場人物を科学者とそれを管理する政治家に置き換えたポリティカル・フィクションだった。フリーマントルの作品が好きな人は楽しめるものと思う。ただ、さすがに守備範囲外であるせいなのか、科学に向ける視線がかなり甘く、結果として科学者の描写が平板になっているように思った。キム・スタンリー・ロビンソンの『レッド・マーズ』のような意地の悪さはあまりなく、フリーマントルの小説にしては善玉と悪玉の区別がはっきりしている。

 環境ものSF小説の中に置いて見れば、群を抜いて複雑かつ面白い構成になっていることは間違いない。ただ、私がこの人の作品に期待していたものと比べると、拍子抜けしたと言わざるをえない。

2003/4/27

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