燃えつきた森

Play with Fire

デイナ・スタベノウ / 早川書房 / 98/06/30

★★★★

安定している

 アラスカを舞台にしたケイト・シュガック・シリーズの第5作。このシリーズは、アラスカが舞台であり、主人公が女性のアリュート人であるという設定で楽をしているかのように(最初のうちは)思ったのだが、こうやって回を重ねるうちに、この設定をとことんまで利用しようというその意欲に好感を持てるようになってきた。

 この『燃えつきた森』でのテーマはキリスト教ファンダメンタリストなのだが、単にファンダメンタリズムを批判するだけでなく、キリスト教そのものが弾劾の対象となっている。それは、アリュート人がキリスト教を信仰していないという事情だけでなく、アラスカに住んでいる非アリュート人も、(アメリカ的)キリスト教に代表されるアメリカ的感性から逃げて、アラスカに腰を落ち着けた人々である(本当のことかどうかは知らないが)という事情による。このことの記述はいくぶん教条的ではあるけれども、嫌味にはなっていない。

 主人公ケイトがアラスカの大自然の中で生きる姿の描写には、毎度のことではあるが、感激する。ある種、典型的なマイノリティ讃歌なのだが、このデイナ・スタベノウという作家は、筆力というもので突き抜けることができるということを改めて教えてくれる。

1998/7/17

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