雪の狼

Snow wolf

グレン・ミード / 二見文庫 / 97/10/25

★★★

少しぎごちないけど盛り上がるところは盛り上がる

 1953年、アメリカは実はスターリンを殺すべく、ソ連に暗殺者を送り込んでいた、という歴史の中にうまく活劇をもぐりこませた冒険小説。著者はこれが2冊目らしく、日本への紹介は初めてである。「フォーサイスをしのぐと全世界で賞賛」されていると、紹介文には書かれているけど、フォーサイスをしのいでも別にねえ。

 人物描写がステレオタイプで少々うんざりしたけれども、最後の方ではさすがに盛り上がった。

 もう1つ、この小説で興味深いのは、話の軸となる人物が微妙にずれていく点である。この本は、不可思議な死を遂げたあるCIA職員の息子が、父親の消息をたどって真実を発見するという大枠の中にあるのだけれども、このCIA職員は実のところ、ストーリーの主人公ではないのだ。作者のテクニックの未熟さと考えることもできるけれども、おそらくは意図的な仕掛けだろう。最後の盛り上がりとも関係するけれども、このストーリーの本当の軸となる人物の重要性を隠すためのレッド・ヘリングなのだ。

 この点を除けば、凡庸な、適度にうまく書かれた冒険小説である。

1998/3/27

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