次なる戦争

ネクスト・ウォー

The Next War

キャスパー・ワインバーガー、ピーター・シュワイツァ / 二見書房 / 98/08/25

★★★

5つの近未来的軍事シナリオを描いたシミュレーション小説

 著者のワインバーガーはレーガン時代の国防長官。もう一人のピーター・シュワイツァーはスタンフォード大学フーバー戦争革命平和研究所の客員研究員。近未来を舞台にした軍事シナリオを5つ取り上げて、それを軍事スリラーというよりも、無味乾燥なシミュレーション小説みたいな形で描いたもの。とうぜん予想されるように、1990年代に入って米国の軍事予算が大幅に削減されたために、これらのシナリオに米国が適切に対処できなくなる、ということを主張することが目的の本。マーガレット・サッチャーによる「はしがき」がある。

 5つのシナリオはそれぞれ、「北朝鮮および中国」、「イラン」、「メキシコ」、「ロシア」、「日本」となっている。

 最後の「日本」のシナリオの概略。米国の攻撃的な対日通商政策により、日本と米国の関係が不安定化し、日本の中でナショナリズムと政治的過激主義が高まった。一方、米国が太平洋での軍縮を進め、北朝鮮が核兵器を配備したことにより、日本は核兵器をすでに配備しており(2001年)、その後も軍備増強を重ねていた。石油価格の高騰のあおりを受け、日本は経済的な窮地に陥っていたが、それを打開するために、ナショナリスティックな性向を持つ内閣が東南アジア方面への侵略戦争を開始する(2007年)。

 さて、一日本人の読者として、日本が核軍備を行うというのはありえそうもないことに思えるのだが、『米中戦争』でも、やはり日本が近いうちに核実験を行うという想定に立っていた。たまたま二見文庫がそういうのばかり翻訳出版しているということなのかもしれないが、少なくとも日本の外から見る限り、日本がポスト冷戦の世界の中で核軍備を行うというのは必ずしも突飛な発想ではないのだろう。日本は、それが突飛なことなのだということを対外的に強く主張していく必要がある(それが突飛なことなんだとして、だが)。しかしその実、それがほんとうに突飛なことなのかどうか自信が持てないのだが。特にこのところのインドとパキスタンの核実験に関する世の中の報道などを見ていると、依然として核を持つこと自体がタブーとみなされていて、冷静な議論ができない様子がみてとれる。こういう状況は危険である。

1998/8/30

TRCの該当ページへ

amazon.comの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ