妻よ!

わが愛と希望と闘いの日々

河野義行 / 潮出版社 / 98/06/27

★★★★

河野氏の妻の介護の様子を中心とする淡々としたエッセイ

 サリンの吸引による心肺停止のおかげで、「央外套症候群」あるいは「無酸素脳症」という病気になってしまった妻、澄子氏の介護の様子を中心に淡々と記述しているエッセイ。それに、松本サリン事件の発生から捜査、報道の経緯がたくみに織り込まれていて、なんというか技巧的というか、ゴースト・ライター(ちなみにあとがきによると鳥飼新市という人)の腕はかなりなもんだと思わせる本。

 河野氏には、『「疑惑」は晴れようとも』のあと、浅野健一との共著で『松本サリン事件報道の罪と罰』という著書があるようだ。

 ちなみに報道機関の愚かさは現時点でも変わっておらず、最近では和歌山県のカレーへの毒物混入事件に関する報道がかなり悲惨である。

 そのことも含めて、またこの本も含めて、河野氏はせっかくこういう立場を獲得できたのであるから、もっと強硬な態度をとってもよかったのではないかと思った。この本はなんか日本人好みの、ある種の情緒を突いてくる「感動的」な本であって、もちろん私もぐぐっと来るところがあったのだけれども、この事件をこういう形におさめてしまっては元も子もないという感じがする。かといって、妻の世話をする河野氏の「軟弱さ」を非難するわけには絶対にいかないわけで。いやほんとに感動的だ。この本が売れるということ自体が、この悲惨な状況の根深さを示唆しているように思う。たぶんこの本を買った人と同じ人が和歌山県の「住民」に関する報道を楽しんでいるわけなので。

1998/8/30

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