サカナと日本人

山内景樹 / 筑摩書房 / 97/08/20

★★★★

日本の漁業を広い視野で捉えた名著

 著者は水産ジャーナリストだそうです。ちくま新書の小さな本で、日本人と漁業の関係を、ハマチ、クルマエビ、コイ、ニジマス、アワビ、アユという6つの生物を通して論じている。

 この6つの生物が選ばれているのは、ハマチについては養殖、クルマエビについては流通、コイについては日本独自の淡水魚の利用、ニジマスについては海外から入ってきた淡水魚の利用と養殖、アワビについては日本の漁撈の祖型、アユについては日本における水産資源の活用のしかたの祖型という問題を立てているからなのだが、議論はこれらの問題から大きく、ダイナミックに広がっていくので、読んでいて非常に楽しい。生態学にも考古学にも偏らない、水産資源の利用というきわめてプラグマチックなところに視点を置いた本で、ジャーナリストの著作としての理想の姿に近いという感じがする。何気なく手に取った本でしたが、見事なものでした。とりたてて水産業とか漁業とかに関心のない人でも、読めばきっと興味が湧くことでしょう。私がそうでした。

1998/3/30

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