謎とき日本近現代史

野島博之 / 講談社 / 98/08/20

★★★★

志の高い本

 著者は予備校で日本史を教えている人らしい。日本の近現代史に関して、素朴な疑問を9つ立てて、それをわかりやすく説明するという趣向の本。その9つの疑問とは、「日本はなぜ植民地にならなかったか」、「武士はなぜみずからの特権を放棄したか」、「明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか」、「戦前の政党はなぜ急成長し転落したか」、「日本はなぜワシントン体制をうけいれたか」、「井上財政はなぜ「失敗」したか」、「関東軍はなぜ暴走したか」、「天皇はなぜ戦犯にならなかったか」、「高度経済成長はなぜ持続したか」

 いずれの問題についても、複数の方向からの説明を提示している。対象読者を高校生レベルに設定している。これはきわめて野心的な本だといえる。こういう本は、あらゆる分野で、強く待ち望まれていると思う。著者の志を高く評価したい。

 その上での注文。そもそもこの9つの問題がどこから出てきたのかがまったくわからない。そして私が思うに、これらの問題そのものよりも、こういう問題が出てくるその背後にある問題意識の方が重要なのだから、本当ならば最初の章で、日本の近現代史を眺める上での問題意識を(それがどのようなものであれ)提示し、その具体的な適用例として、個々の問題を取り上げるという体裁にするべきだったと思う。実際には、この本で取り上げられている諸問題は有機的に関連しておらず、何か大学受験生が日本の近現代史の年表を眺めていて、ばらばらに思いついたリストのように見える。

 とうぜんながら、各問題に対して提示される説明が、他の問題の説明とどのように絡み合っているかという点も重要だと思うのだが、そういう配慮もない。問題意識を縦軸とし、歴史を駆動する諸要因を横軸として、その交点に「問題」が浮上してくるものであるはずなのだが。

 文体はもうちょっと引き締めてもよいと思う。ともあれ、この著者には今後もこの路線のものをたくさん書いてもらいたいと思う。

1998/9/3

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