兵士に聞け

杉山隆男 / 新潮社 / 98/08/01

★★★★★

力強いルポルタージュ

 1995年に出版された単行本が文庫化されたもの。自衛隊の隊員の生活に密着して取材することで、自衛隊の抱えるさまざまな問題を浮き彫りにするという試み。

 日本のノンフィクションに特徴的な、人称の曖昧な文章があちこちに出てくるけれども、そのような欠点を補ってあまりある力強いルポルタージュだった。大きく取り上げられているのは、レンジャー訓練、護衛艦「はたかぜ」の同乗記録、奥尻島の地震のときの自衛隊の動き、PKOによるカンボジアへの派兵である。

 特に、カンボジアに出かけていった隊員たちの活動を、当事者たちから詳しく聞き出して再構成している部分は圧巻である。PKO法と憲法に制約され、強烈な「縛り」のもとで活動せざるをえなかった彼らが直面したジレンマが鮮烈に描かれている。しかし、そういう制約なしに本物の軍隊として送りだされたとしたら、自衛隊はそういう状況にとうてい耐えられないだろうということも、本書の他の部分から容易にわかることなのだ。彼らが直面した最大の危機も、ロサンゼルス市警の警官が毎日の勤務で経験している危機よりは小さいかもしれない。まことに日本は奇怪なものを抱え込んでしまったと思わざるをえない。

1998/9/6

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