患者はこうして殺される

浅山健 / 飛鳥新社 / 98/10/22

★★★

告白と告発の書。なにか釈然としない

 著者は癌研究会附属病院の麻酔科医長で、「医療裁判史に残る麻酔事故」を起こした人物。p.21から引用。

「……麻酔医が、術中に患者の血圧測定などのバイタルサインの引継ぎをしないで手術室を離れてしまい、誰も監視するものがいないまま手術が続けられたため、その間に生じた気管内挿管と人工呼吸器との接続部分の緩みによる、麻酔ガスの漏出に気づかず、酸素不足の発見が遅れたケース……」

 著者はこの本で、この事故が起こった経緯を説明し、それだけでなく、事故の後の民事裁判で、本質をずらす法廷戦術を使ったことを告白している。

 著者の主張は、日本においては麻酔医が軽視されているので、個々の麻酔医に負担がかかりすぎ、適切な施術が行えないということである。この事故のときにも、著者は複数の麻酔をかけもちしており、そのせいでバイタル・サインの適切な監視を行うことができなかった。この点で、著者は勤務していた癌研附属病院に対して批判的である。また、民事裁判においても癌研側が十分なサポートをしてくれなかったという恨みがあるようだ。

 ところで、この事故が起こったのは1978年なのだが、著者は1996年まで癌研附属病院との間で麻酔診療契約を結んでいる。たぶんこの契約が終わった後に本書を執筆したのだろう。そこにはどういう経緯があったのだろうか。

1998/10/13

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