知の鎖国

外国人を排除する日本の知識人産業

Cartels of the Mind: Japan's Intellectual Closed Shop

アイヴァン・ホール / 毎日新聞社 / 1998/03/30

★★★

ごもっとも

 1997年度のビジネスウィーク誌の「97年度ビジネス書ベスト10」に入った"Cartels of the Mind"の翻訳。

 5つの章で、それぞれ弁護士、特派員、大学教員、科学者と留学生、批評家に対して、日本がいかに外国人を排斥しているかを論じている。いずれもよく知られた(というかごく日常的な)問題だが、日米友好基金の活動などに携わった経験のある著者は、それぞれの問題を具体的な例を出して論じているので、参考になる。

 この本全体を通して語られている現象は、別に外国人が特別に排斥されているということを持ち出さなくても、それ自体で日本人にとって問題である。弁護士の数が限られていること、排斥的な記者クラブが存在すること、大学教員の流動性が阻害されていることなどは、日本人自身に被害を与えている問題である。

 この本は註の部分がけっこう面白くて、たとえば286ページの11項では日本人の手による「ユニークさの理論」の面白い例を取り上げている。「ここには最も影響力のある著書だけをいくつかあげる」とあって、7冊の本が紹介されている。中根千枝『タテ社会の人間関係: 単一社会の理論』、土居建郎『「甘え」の構造』、会田雄次『日本人の意識構造』、渡部昇一『日本語の心』、角田忠信『日本人の脳: 脳の働きと東西の文化』、公文俊平、村上泰亮、佐藤誠三郎『文明としてのイエ社会』、イザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』。で、これらが「最も影響力のある著書」だといったい誰が言ったのだ? 私の知る限り、まともな日本人はこれらの著書を真面目に受け取っていない。といいながら、この「まともな」日本人はごくごく少数派なのかな? よくわからない。

 いずれにせよ、外国人の批評家たちが、日本の知識人的なメディアの例として「文藝春秋」とか「朝日新聞」を持ち出すたびに、ものすごい違和感を感じる。日本には、ちゃんとしたオピニオン雑誌みたいなメディアは存在しないのだ。日本の政府を普通の国の政府とみなしてはいけないように、日本の新聞雑誌を普通の国の新聞雑誌とみなしてはいけない。

 したがって、この本で語られているもろもろの事例の背後にある原因を探る手がかりとして、この種のメディアを用いてはいけないのだ。むしろ、実際に起こった排斥の、具体的なプロセスの中で、それに関わった日本人たちがどのように考え、どのように行動したかを追っていくべきである。もちろんこれは日本人ジャーナリストが行う仕事であって、とうぜんながら難しい仕事だけれども、そういう著作がない限り、日本人が実際にどのように考えてこういうことを行っているのかは永久にわからないだろう。

1998/4/3

 記者クラブについては、『新聞が面白くない理由』が面白い。

1998/6/17

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