長い雨

The Long Rain

ピーター・ガドル / 早川書房 / 98/10/31

★★★★★

力作

 中年の弁護士が少年を車で轢き殺し、別の男が逮捕される。そのとき自首しなかったために、のちのちたいへんな目に遭うという話。著者はこれが4作目らしい。

 これはなかなか凄い小説だ。主人公はカリフォルニアの落ちぶれたブドウ生産地帯に住んでおり、上記のような大変なことが起こっているというのに、主人公の優柔不断さもあいまって、生活はどうしてもペースのゆっくりしたのどかなものになる。そののどかさ、ゆったりした感じが、小説にサスペンスを与えているのだ。これはかなり高級なテクニックだと思う。

 事態はかなり大変で、しかも本の残りの厚さから考えても、主人公がここで優柔不断な態度をとっていることで後々悲惨なことになるのがわかりきっているのに、主人公はブドウの収穫なんぞをしている。これは、映画の登場人物が闇に潜む危険人物に気づかずに行動していることから生じるサスペンスとは違った性質のものだ。この小説の主人公はその危険に十分に気づいているのだが、いろいろな事情から、かなりペースの遅い生活をせざるをえないのである。

 彼が犯した犯罪、すなわち少年を轢き殺したという事件に限らず、彼が行うことすべてが絶望的な結末に向かうことがはっきりしている。ブドウ園は無茶苦茶になるし、家庭は崩壊するし、村からはつまはじきにされる。最後の方ではいくつか急展開がある(というよりも、急に展開するところはすごく速くて、コントラストが強調されている)のだが、全般に、ゆっくりと確実に滝に向かっていく小舟をみているような構成。

 最近読んだ新しい作家のなかでは最良の部類に属する。今後が非常に楽しみだ。

1998/10/29

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