ラスト・ファミリー

The Last Family

ジョン・R・ミラー / 講談社 / 98/10/15

★★★★

なかなかの力作

 これは著者のデビュー作らしい。デビュー作らしい、力のこもった瑞々しい作品。

 麻薬取締局(DEA)に罠にかけられたと思って恨みを抱いている元情報部員が、チームの元メンバーの家族を次々と殺していく。これは、最後の作戦で引退に追い込まれたチームのリーダーを再び舞台に登場させるための仕掛けであった、という話。このリーダーが現場に復帰し、臨時チームを組んで、犯人を追い詰めていく。

 この本では、とりわけ問題の元情報部員と、彼の行動の描写が印象的だ。いろいろとあくどいことをやるのだけれども、それらがなぜか美しい感じなのだ。一方、引退に追い込まれていたチーム・リーダーをはじめとする捜査チームの面々の描写もなかなかリキが入っている。ストーリーが進むにつれ、これらの要素に少し綻びが見えてくるけれども、とりあえず最後まで突っ走ったという感じ。

 一つ、物語技術上の興味深い工夫。途中で疑わしい登場人物が出てくるのだが、その正体がなかなか露顕しない。最後に、こちらが予想していたのとはまったく違うタイプの人物であることが明らかになる。これには完全にだまされた。しかも心憎いことに、この人物はこういう感じでこちらをだますためだけに登場してきたような感じなのだ。要するに、それ以外の点でまったくストーリーに貢献しないのである。

 この著者の第2作が出たら必ず読むだろう。

1998/11/9

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