ビートルズを笑え

中山康樹 / 廣済堂出版 / 98/08/15

★★★

帯には「聖域でやりたい放題」とあるが

 ビートルズのシングルとアルバムを1枚ずつ取り上げて、冗談をとりまぜて紹介していく本。帯には「聖域でやりたい放題」と書いてあるが、読み進むにつれ、本当にビートルズは聖域なんだということを再確認した。基本的にAnthology 3が出た時点での研究成果を踏まえての解説だが、ところどころにきつい冗談が混じっている。そしてビートルズが聖域なもんだから、その冗談になかなか笑えない。

 ひとつ顰蹙ものの説を唱えておくことにしよう。フィル・スペクターが行ったThe Long and Winding Roadのサウンド・プロダクションを聴いて、ポール・マッカートニーは怒ったということになっている。しかし、Anthology 3に収録されているオリジナルの形に近いテイクを聴いたとき、私は、「ああ、フィル・スペクターはやっぱり偉かったんだ」と思ったのだが、みなさんはいかがでしょうか? この曲があの形で公開されていたら、The Long and Winding Roadはいまほど有名な曲にはなっていなかっただろう(その代わりに、一部の人々からより愛されていたかもしれないが)。あのようなアレンジに怒ってしまうようなポール・マッカトニーだったから、McCartneyとかRamとかのまったく一般受けしないアルバムばかり作ってしまう。そして、Band On The Runでフィル・スペクターの方に近寄ったおかげで、またヒット街道に戻れたわけだ(ちなみに私は、この頃のポールのアルバムの中ではRamが一番好きである)。

 こういうことを書いているだけで「大丈夫だろうか」と思ってしまうほど、ビートルズは聖域である。その意味で、この本はとても偉いと改めて気づく。

1998/12/02

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