安全学

村上陽一郎 / 青土社 / 98/12/04

★★★

意欲的な取り組みではあるが

 「安全学」とは著者の作った言葉。「安全」という概念を学際的に広く扱おうということらしい。

 工学的アプローチなのかと思ったら、実のところほとんどの部分が、倫理学とか道徳哲学で扱われてきたような問題に割かれている。何というか、「安全学」の論理的基盤を構築しようということらしい。

 さて、この「安全」なのだが、safetyとsecurityの違いが無視されているような気がする。といって、この両者に具体的にどのような違いがあるのかは明確ではないのだが、結構重要なんではないだろうか。本書で取り上げられている個々の「安全」について、この2つのうちのどちらなのかをまず判断する必要があるのではないかと思った。

 もう1つ。この本では倫理学的な、理論的な部分での考察が多く書かれているのだが、ここの部分が混乱しているような気がする。著者の考察が、キリスト教信者、科学史家、(安全学の)工学者、歴史家、評論家などなどのいろいろな考えうる立場のどこから出ているのかが明確でないし、一貫性が取れていないのだ。根本的な考察であればあるほど、この点のダメージは大きい。

1998/12/15

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