目覚める殺し屋

Walking Back the Cat

ロバート・リテル / 文藝春秋 / 98/01/10

★★★

肩の力を抜いた小品というところか

 この『目覚める殺し屋』は、ロバート・リテルの作品の中では、ものすごく肩の力を抜いた小品と言えると思うのですが、やはりそれなりに興味深い小説になっています。個人的には『チャーリー・ヘラーの復讐』とか『スリーパーにシグナルを送れ』などの、物凄く凝ったものを読みたいのだけれども。

 ロバート・リテルという人は、「イギリス流でないアメリカ人のインテリ型スパイ小説作家」と分類できる人で、奇怪な論理の中に上質な情緒を織り込むのが上手なのですが、この『目覚める殺し屋』では情緒の方に力点が置かれている分、論理はおざなりで、もしかしたらこれは開き直りなのかもしれないというほど、ある意味で単純です。

 まあしかし、ここに登場する人物たちはいずれも魅力的で、湾岸戦争で心に傷を負い、インディアン居住地に流れ付いた男と、ソ連が崩壊するのを不安な気持ちで見ながらスリーパーとなる暗殺者を取り巻くそれぞれの環境の論理が、情感豊かに描かれています。

 とは書いてみたが、やっぱりこれはリテルにしてはよくない方に入るだろうなぁ。初めての人には勧められない。

1998/4/8

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