バブルとデフレ

森永卓郎 / 講談社 / 98/12/20

★★★★★

バランスのとれた概説

 日本が経験したバブルとその後の恐慌性デフレに関する「心理分析」(帯の表現)。このところマクロ経済学的なアプローチでの解説ばかり読んでいたので、こういうのは新鮮なのだが、世間ではこちらの方が普通なのか? 161ページあたりから、日本がデフレ・スパイラルに入り込んだ3つの要因を上げている。1つ目は、多くの商品について市場原理が不徹底であるために、企業が値崩れを防ぐために生産調整を行っていること。2つ目は、日本経済が不調であることを説明するもっともらしい理論が、ミームの生存競争で勝つこと。そして3つ目として、次のように述べる。

日本を恐慌性のデフレに陥れた第三の要因は、日本経済の悪化を日本人が内心楽しんでいるのではないかということである。
もともと日本人は演歌の世界が好きな国民である。北の凍てつく大地にたたずみ、かなわぬ想いをそっと涙する。そんな情景が日本人は大好きなのだ。

 これは興味深い(ただし、2つ目の要因と重なっているような気もするのだが)。これが本当に妥当かどうかはともかく、こういう要因を考慮にいれない経済分析には根本的に不信感を抱きつつあるこの頃。ただし、日本人に固有の特性としてこういうことを述べるのが適切なのかどうかは微妙なところ。景気循環という現象には、普遍的に、人々の感情的サイクルも織り込まれている、という可能性もないか?

 前半の、80年代のバブルが高度成長期に共通する部分が多かったことを指摘する箇所で、地価、株価、東京への人口集中、離婚率、進学率などが同じような動きを見せているという話が興味深かった。

1999/1/12

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