ソロ

単独登攀者 山野井泰史

丸山直樹 / 山と渓谷社 / 98/11/20

★★★★★

単独登山の意味合いを描き得た良書

 山野井泰史というソロ登山を行っている先鋭的登山家の半生記。

 どうも日本人の手による登山の本は、登山家本人が書いたものであれ、第三者が書いたものであれ、情緒に流れすぎて気持ち悪いことが多いのだが、この本の著者はそれを気持ち悪く思う感性を持っていてくれているようで、そこから必死に離れようとしてかえって不自然になっているきらいもないのだが(山野井泰史とその配偶者に対するけっこう厳しい描写など)、それでもやっぱり日本人、抑えようとしてもにじみ込んで来る情感の部分がとてもいい感じだ。

 山野井泰史という人は、フリークライミングの要素も取り入れた先鋭的な登山を単独で行うという、いまの日本の登山の最も先鋭的な部分を担っている登山家らしいのだが、そういう登山をする人がいかに社会的規範から逸脱するのか、またそういう人が壁に取りつく前にどのような不安を抱くのか、壁に取りついているときにどのようなことを思うのか、というような事柄について、いままで読んだどの本よりも納得のいく記述を読むことができた。素材も良いが著者も良い。

1999/1/15

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