死者は還らず

山岳遭難の現実

丸山直樹 / 山と渓谷社 / 98/03/15

★★★★

かなりまっとうな取り組み

 『ソロ』という本が面白かったので、同じ著者による登山事故のドキュメンタリーを読んだ。この本も、『ソロ』と同じように、日本によくあるタイプの本とは違う本を書こうという意気込みに推進され、かえって行きすぎた部分もあるにせよ、やっぱり日本人だなあ、という印象を与えるという本になっている。

 登山事故に関する記録の中では、『生と死の分岐点』がきわめて面白い。ドイツ人が書いた本なのだが、もう徹底的に合理的かつ実用的であり、情緒の入り込む余地などまったくない。一方、日本人が書くものは情緒に流れがちなことが多く、また事故の分析から引き出される教訓も精神論的である。この『死者は還らず』も、死者を美化して話をうやむやにするという悪弊を避ける努力はしているものの、結局のところ精神論に落ち着いてしまう。

 『ソロ』で描かれていたような超先鋭的な登山であれば、登山家自身も精神論の部分でしか調整できないような領域にいたっていると思うのだが、そうでないほとんどの登山事故は、それ以前のところで起こっているのだろうし、ほとんどの登山者は精神論を自らの登山に活用することはできないだろう。

 近未来の先鋭的でない登山は、登山者全員にGPSと衛星携帯電話と(必要ならば)雪崩ビーコンの携帯を推奨する、というような形に進むだろう。そういう方向との整合性を持たない登山論や精神論は反動的であるということにならざるをえないと思う。

1999/1/15

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