ナイトシェード

Nightshade

レジ・ギャドニー / 講談社 / 98/02/15

★★★

非常に地味な官僚スパイ小説かと思ったら実は恋愛小説

 この本が書かれたのは1987年で、それが1998年に翻訳されたわけだけれども、このズレが結構大きな問題になっているかもしれないと思いました。話題のタイムリーさとかそういうのではなく、これは実は、ル=カレやフリーマントルと少しだけ似た、イギリスの官僚スパイ小説であり、この分野が1980年代からかなり進歩してきたという印象があるからです。

 ストーリーはかなりめちゃくちゃというか、この分野でのリアリティは、このジャンルで確実に進歩してきたものなので、1998年の現在で見ると少しばかり甘すぎるという感じがしました。CIAがイギリスの情報部員を誘拐するというのはやっぱりちょっと。しかし、この著者はどっちにしろそういうことはあまり考えていなかったのかもしれない。

 で、まったく違った側面で、この小説には魅力を感じました。主人公とその恋人の恋愛を描いている部分です。その濃密さと、少し突き放している部分が、いかにもイギリス的でよかった。ストーリーの中で重要な役割を果たす元FBI捜査官とその妻もよく、特にその妻のクライマックスでの諸々の思考はなかなか魅力的でした。

 要するにそういう本なのでしょう。帯には「蘇った対日諜報作戦の機密ファイルが死を招く」とあるけれども、そういうのを期待して読むと完全に裏切られる。要するにイギリスの狭い地域での二組のロマンスを描いた小説、とでもいうべきで、その点ではとても楽しんで読みました。

1998/4/8

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