日本人の顔

小顔・美人顔は進化なのか

埴原和郎 / 講談社 / 99/01/15

★★★

いまひとつよくわからない

 著者は人類学者。日本人の頭蓋の、特に顔の部分の変化の歴史を解説した入門書。

 柱は2つあって、1つは縄文タイプと弥生タイプの分布。こちらの方はまあ正統的な話なので問題はない。もう1つは、食べ物の変化による顔の形の変化である。そして、本書のサブタイトルにある「小顔・美人顔」は、日本人が柔らかい食べ物を食べるようになったため、顎の部分の骨と筋肉が発達せず(因果関係としては筋肉が発達しないので、それに引きずられて骨も発達しない)、顔が小型化したように見えるのである、と説明している。

 この「食物の変化による進化」という概念がどうもわからない。本書では戦後の日本人の身長の伸びについても言及し、日本人が摂取する栄養が豊かになったからであるとしているが、これは論理的には成り立たないと思うし、じっさいどこかで、これは「都市化」に見られる普遍的な現象なのであるという説明を読んだことがある(その本では、各地から集まってきた人々の遺伝子が混ざることで平均して身長が伸びるという説明をしていたように思うが、これもまた信じていいものかわからない)。だいたい、「栄養の豊かさ」説では、「現在も」日本人の身長が伸びつづけていることが説明できない。穏当な考え方をするとしたら、食べ物だけでなく、生活習慣一般の変化に伴って、身長に影響を与えるいろいろな要因が、身長が伸びる向きに変わってきている(たとえば畳の上での生活が少なくなったなど)とは言えるかもしれない。しかしそうだとしても、日本人の(身長に影響を与える遺伝子の)遺伝子プールには基本的に何の変化もないはずだ。

 同じことが、この本で言っている日本人の顔の小型化についても言えるので、果たしてこれを進化と呼んでいいのかという疑問が浮上する。この本で引用されている鈴木尚の将軍家の顔つきに関する研究は、日本社会の一定の階層で性選択が働いていたことを示唆しているが、日本人全体という人口集団でこれが本当に機能しているだろうか?

 他の国ではどうなのだろう? もし、「柔らかいものを食べることが多くなった」ことから顔が小型化するのであれば、先進国ではのきなみ顔が小型化しているはずである。気になるところだ。

 というふうに、読んだあとに疑問ばかり残る本だった。

1999/1/24

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