なぜ少年は警官を殺したのか

Innocence Lost

カールトン・ストアーズ / ごま書房 / 98/01/05

★★★

地味ではあるが秀作ノンフィクション

 1987年にテキサス州ミドロシアンで、高校におとり捜査のために潜入していた警官が高校生によって射殺された事件を描いたノンフィクション。とても地味な題材ではあるが、著者自ら住んでいる土地での事件だということもあって、とてもていねいに書かれている。

 いやまあ、読み終わっても、よく書かれているなあという感想が浮かぶぐらいなのだが、こういう秀作を翻訳出版したこと自体をまず賞賛しておこうと思う。地味ではあるにせよ、実際にこれだけの取材をしたということは大変なことだし、描き方もとても優れている。そもそも地元高校におとり捜査官を入れることの決定がなされるプロセスなどはとても興味深い。しかし、この本を読む日本人の姿というのがどうにも思い浮かばない。考えられるのは、アメリカのミステリ小説が好きで読んでいる、私のような物好きぐらいである。犯罪実録小説マニアが読むには地味すぎる。

 日本がアメリカの後追いをしているとすれば、今後、日本でもこういうタイプの現象が頻繁に起こるようになるのだろう。そのときの日本とアメリカの大きな違いは、日本には、この本に出てくるような、コミュニティにコミットしている警察官や行政官たちはいないし、またそういう人々にシンパシーを抱く作家もいないということである。まあその意味でいえば、この本はかえって、アメリカのコミュニティがちゃんと機能しているということを教えてくれているのいえないでもない。どれだけ高校でドラッグが蔓延していても、それをコミュニティはしっかりと心配していて、対策を練っている。その意味では、日本はすでにアメリカよりも悪い状態にあるといえないでもない。

1998/4/8

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