グローバル資本主義の危機

「開かれた社会」を求めて

The Crisis of Global Capitalism

ジョージ・ソロス / 日本経済新聞社 / 99/01/18

★★★★

いろいろと複雑だ

 グローバル資本主義の行く末を危惧し、マーケットを盲目的に信頼する態度を市場原理主義(market fundamentalism)と批判し、何らかの政治的規制が必要であると説く。言っていることは素朴ではあるが、『ヘッジファンド』などの陰謀論者は、ソロスのこういう素朴な顔の背後には陰謀がある、と言っている。本当のところがどうなのかはよくわからない。

 ソロスのような人物がグローバル資本主義を批判するのは意外なことのように思えるが、『ヘッジファンドの素顔』でも論じられていたように、トレンドに対してポジティブなフィードバックをかけるのは、ソロスがやっているようなヘッジ・ファンドではなく、それ以外の機関投資家であるという考え方がその基盤にはある。ソロスにとってグローバル資本主義が危険なのは、このようなトレンドへのポジティブ・フィードバックがブームとバストのサイクルを作り、その過程で社会の「真の価値」が脅かされるからである。マーケットに短期的な均衡を保証するメカニズムはないので、マーケットを過度に信頼する態度をマーケット・ファンダメンタリズムと呼んで批判する。

 とまあこれはいいとして、「真の価値」の部分は難しいものがある。ソロスは「開かれた社会」という言葉を使うが、実際のところこれがどういうものなのかは判然としない。普通に考えれば民主制ということなんだが、ソロス自身は(アメリカでいま見られている)代議民主制を批判しているようだし、彼が行っている麻薬解禁や安楽死合法化のためのロビーイングとの関連性も明白ではない(彼の中では明白なんだろうが)。要するにソロスがそうであって欲しいと思っている社会ということなわけで、金持ちが世直しを願って金を投入し始めると怖いぞ、という教訓だろうか。

 榊原英資による解説がついているので-10点。

1999/2/26

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