人質

The Standoff

チャック・ホーガン / 講談社 / 97/11/15

★★★★

緻密な描写の傑作

 著者はこの本が処女作だそうで、まあ驚くべき処女作だといえるでしょう。

 自分の家族を人質にとって立てこもった男を説得するという仕事を、FBIの人質交渉の専門家が遂行していくが、実は彼は以前に仕事に失敗してアルコール依存症になった過去があって、また現場では連邦執行局やら郡警察やらFBIの支局やらとうまく関係を持たなくてはならなくて、などなど、きわめてステレオタイプな設定ではあるのだけれども、それを細部の圧倒的な描写で押し通してしまうという王道です。

 ここ数年で、人質交渉もののミステリ小説に大きなテクノロジー上の進歩が見られた気がするのだけれども、これはもしかしたら例のウェイコ事件の影響だろうか。『静寂の叫び』とともに、今後書かれる人質交渉ものが必ず踏まえなくてはならないベースラインを作り上げた作品だと思う。あとまあ、複数の部局がぶつかりあうような場でのマネジメント、ですかね。地元警察とFBIが反目しあって、FBIはいやなやつで、というとおりいっぺんの設定ではもうだめだ、ということです。

1998/4/8

 ウェイコ事件よりもルビー・リッジ事件の直接的な影響を受けたものと思われる。この事件については『FBI神話の崩壊』『American Terrorist』に言及がある。

2001/5/31

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