動物園にできること

「種の方舟」のゆくえ

川端裕人 / 文藝春秋 / 99/03/20

★★★★

出来レースのような気もするが、良い本

 『イルカとぼくらの微妙な関係』の著者がアメリカの動物園を取材して書いた本。

 ある意味でこの本は出来レースである。たぶん著者は、取材を開始する前からこの本がどういう結論になるのかがわかっていただろう。読者としての私も、予想される内容からほとんど逸脱していないという不満と安心感を抱いた。要するに動物園の問題とは環境保護の問題であり、われわれと動物園の間には「微妙な関係」があるが、それはわれわれとイルカとの関係よりももっと根の深いものである、ということだ。

 まあ細かい取材結果はなかなか興味深いとしても、要するにそういうことなわけだが、一つだけ驚いたのは13章の「ブロンクス裁判」だった。アメリカでも最も「良い」とされているブロンクス動物園に、アニマル・ライツ系の運動家とディープ・エコロジスト系の運動家を(別々に)連れていって、感想を聞くという趣向である。この部分に割かれているページ数が少なく、出てきた感想も平凡だという不満はあるが、これは著者のジャーナリストとしての感性の鋭さを如実に表している企画だと思った。まあ、そもそもこの本は、動物園で実際に仕事をしている人々に対するインタビューであるので、動物園そのものに対する根源的な批判が彼らの口から出てくることは望めない。この点については著者も織り込み済みで、そのことから出てくる何ともいえない諒解のしにくさを、動物園に批判的な運動家の言葉に代弁させるという、まあこのあたりの構成の仕方も出来レースなんだけど、本当に一緒に動物園に足を運んでしまうという機動性は高く評価すべきだ。

 ちなみに、自分の悩みを前面に押し出すその姿勢が少しうっとうしいかも。その姿勢が魅力的であることは確かなので困るんだが。

1999/3/23

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