合衆国崩壊

Executive Orders

トム・クランシー / 新潮社 / 97/12/01

クランシーは進歩している

 クランシーは単なるバカだと思って読まないでいる人は、最近の数冊をぜひ読んでみるべきだ。明らかに成長しているのがわかると思う。この本ではジャック・ライアンがついにアメリカ大統領になるのだが、ライアンの出世にともなって、クランシーが描く世界の範囲も徐々に広くなっていっており、その描写とか作風が改善されたとは決して言わないけれども、少なくとも初期の頃と比べるとうまくはなっている。ジョン・グリシャムと並んで、人間は進歩することもあるんだということを気づかせてくれる珍しい作家で、新作を読むのを楽しみにしているのです。

 それにしても、この『合衆国崩壊』はしょうもない話で、読んでいて何度かバカやろうと思うわけですが、前作の『日米開戦』と同様に、アメリカに少なくとも危機が起こる(ライアンがそれを解決するわけだが)ことに溜飲が下がる思いがする。『日米開戦』では日本人のジェット・パイロットが国会議事堂につっこんだとき、この『合衆国崩壊』ではアメリカにエボラ・ウイルスがまかれたときに快哉を叫んだ人も少なくなかったはずだ。いやもちろん著者の意図はそんなところにはないわけだけど。

 なお、この本は文庫本4冊構成で、1、2が同時に発売され、それから1か月後に3、4が発売された。私は1、2を読み終えたところで続きを知りたくなり、英語のペーパーバックを買ってしまった。前半を日本語で、後半を英語で読むという珍しい体験をした。感想として、翻訳はこれでもクランシーのタカ派性をかなり弱めているという印象があった。

1998/4/8

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