新日本共産党宣言

不破哲三 / 光文社 / 99/03/25

★★★

日本共産党の政策

 井上ひさしが日本共産党中央委員会幹部会委員長の不破哲三に対して、日本共産党の提案する政策を問いただすという趣向の対談集だが、要するに日本共産党のプロパガンダである。

 これまでの経緯とかいろいろをいっさい忘れて、本書に書かれている日本共産党の「宣言」を読むと、それほど悪い内容ではないのだ。特に最近では、日本共産党が経済の分野で掲げている政策が、自民党などよりもはるかに資本主義的であるということが明確になってきていて、奇怪な転倒が生じている。実際、数年間ぐらいは日本共産党に政権をとらせてもいいんじゃないかと思うぐらいだ。

 しかし、井上ひさしとの間で繰り広げられるマッチ・ポンプの観念の部分の奇怪さ(特に農業問題にそれが顕著だ)をとりあえず無視するとしても、賛成しにくい点が2つある。

 一つは、米軍の日本からの撤退と日米同盟の破棄を主張しているところである。これを破棄することによって日本は初めて独自の外交を行えるのだというが、事実上これは中国への歩み寄りに他ならない。まさにハンチントンが『文明の衝突』で述べたシナリオである。日本人がこういう道を望むというのであればそれでもいいし、そうなった場合には日本共産党に中国との擦り合わせをやってもらうのが一番だろうとも思うけれども、その場合、アジアはクリティカルなまでに不安定化しそうな気がする。バルカン半島どころの騒ぎじゃなくなりそうだ。皮肉なことに、日米同盟を破棄するのであれば、極端なナショナリスティックな政権が、「われこそはアジアの雄なり」といってアジアの警察になるべく軍事大国化を押し進める方が、アジアの安定に寄与するような気もする。そういうのはもちろん嫌なので、現状維持が一番だ、というのが私の感想である。たぶんこういう考えの持ち主が多いからいまのような状態が続いてきたんだろうけど。

 なお、日本共産党の日米同盟の破棄は、日本の軍縮も含んでいる。しかし、スイスとかスウェーデンの例をモデルとして挙げているので、軍備増強の方に進むという主張の方が整合性がありそうだ。ここのところをきっちりと説明してもらわないと納得しにくい。

 もう一つは消費税に対して反対しているところである。よくわからないけれども、どうやら所得税、法人税の累進課税の強化を推進したいらしい。これについては個人的に大反対だ。『プライバシー・クライシス』の論旨とも関連するが、所得税・法人税を強化して、なおかつ税収を増加させるためには、たぶん国民層総番号制度が不可欠である。しかも、これを行うと一番打撃を受けるのは中間所得層だ。上層は節税するためのツールをいくらでも利用できるから。間接税から直接税へのシフトを唱える論は、この問題を回避するための具体的なインプリメンテーションを含んでいないと納得しにくい。

1999/3/28

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