盲目の予言者

Random Walk

ローレンス・ブロック / 二見書房 / 98/02/25

★★★★★

ブロックのテクニカルなところが悪い方向に花開いた

 1988年の作品ということだから実はけっこう古い。田舎町のバーテンダーがある日いきなり「歩けばいい」という啓示を受けて東に向かって歩き始める。すると、人々が次々と彼の行進に加わってきて、そこでいろいろな奇跡が起こり、癒されていく。

 この物語の根底にある「癒し」というテーマがどうにも鼻につく嫌な感じで、普通だったらとうてい受け入れがたいのだが、そこをローレンス・ブロックは超絶テクニックで読ませる作品にしてしまっている。これはブロックがいかに凄い作家であるかということの証明に他ならない。ちょっとでも間違えたらハリウッド流のださい感動的作品になってしまうのを、ぎりぎりのところで抑制する技量である。

 バーテンダーが歩き始めるまでの経過を描いた最初の章だけでも読んでみるといい。こんなしゃれた、落ち着いた感じの会話はなかなか読めない。比較の対象にはならないけど、アン・タイラーなんかよりもずっと上等。

 物語のもう1つの軸となる連続殺人者の描写も凄いもので、これは今までに読んだどんな猟奇的連続殺人ものよりも怖いといっても過言ではない。ここの部分は『殺し屋』に発展的に受け継がれているようだ。

1999/8/23

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