秘伝 中学入試国語読解法

石原千秋 / 新潮社 / 99/03/30

★★

いろんな意味で悲惨な本

 著者は「気鋭の漱石学者」。息子が中学受験をするにあたって、国語の受験勉強を手伝った経験をベースに、入試問題の解き方を解説する。前半は受験日記。後半は問題解説。

 いろんな意味で悲惨な本である。まず何よりも、この人の息子は今後そうとう長い間、「入試を親に手伝ってもらった男」という烙印を押されることになるだろう。親がこんな本を書きさえしなければばれなかったかもしれないのに。たぶんグレる。

 この本のおかげで、著者が取り組んでいるという「最先端の現代思想」は、中学の入試問題の解析に役立つものだ、ということが明らかになってしまった。まあ最後の幻想のヴェールを剥ぎ取るという意味では悪くはないけれども、それにしてもねえ。国語の入試問題に取り上げられる物語は、ほとんどが何らかの形での「成長」をテーマとしているので、登場人物がどのような面で「成長」しているのかを考えろ、みたいなことを言ってるわけ。

 まあいろんな感慨はあるけれども、まとめれば、現代的な「受験勉強世代」の弊害がこういう形で現れうるのだな、という感慨か。著者の石原千秋という人物を通して、「受験勉強」というものがどういう風に再生産されるかが垣間見える。これは親の側での再生産。受験産業の側での再生産については、『学力危機』という本が参考になる。

1999/8/23

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