学力危機

受験と教育をめぐる徹底対論

市川伸一、和田秀樹 / 河出書房新社 / 99/04/22

★★

これもまた悲惨な本

 著者の市川伸一は教育心理学などを専攻する東大教授。和田秀樹は精神科医だが、受験教育業界の方で有名な人物らしい。和田の方が受験勉強における暗記の効用を説いたことに疑問を抱いた市川が、電子メールによる対談を持ちかけたことからできた本。

 二人とも何をいいたいのか自分でもよくわかっていない様子だが(これは電子メールによるやり取りという制約があったからかもしれないが)、和田の側が受験勉強と受験教育産業に何らかのポジティブな意味を見いだそうと苦労しているのに対し、市川の側が文句をつけるという感じか。和田の側の主張は、受験勉強が受験教育産業の側でいかに再生産されるかということのサンプルである(『秘伝 中学入試国語読解法』はこれが親の側でどう再生産されるかを示していた)。

 この討論だけを見れば、和田の側に圧倒的に分があるように思われる(だいたい、市川の側は何を言いたいのかほんとにわからない)。しかしこれは、優秀な人(あくまでも相対的に)は学者にはならず受験産業に身を投じるというここ10年ほどの傾向を反映した事情に過ぎないのかもしれない。

1999/8/23

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