新「南京大虐殺」のまぼろし

鈴木明 / 飛鳥新社 / 99/06/03

★★★★

語り口が気に入らないが重要な仕事か?

 そのタイトルが示唆する攻撃的な感じとはまったく違って、日中戦争前後の中国国内での政治的ダイナミクスと、その世界(特にアメリカ)での認知に対するエドガー・スノーの関与を描いた本である。もっぱらここ10年ほどに中国国内で発行された資料をもとに書かれている、とあとがきにはある。

 どうやらこのあたりの分野はまだわかっていないことが多いらしい。この本に描かれていることにどこまで信憑性があるのかを判断する手がかりもあまりない。著者は、ジャーナリストという立場で、この分野にとりあえず足を踏み入れたという感覚でいるようで、本の書き方もそういう書き方(探検、みたいな感じ)になっている。

 個人的には、南京大虐殺という問題が、何よりもこの日本で一番多く議論されており、世界の他の国では(中国も含めて!!)あまり論じられていない、そのためにIris Changの本が売れてしまったという皮肉な状況に関心があるため、中国という国を西洋(特にアメリカ)に紹介したエドガー・スノーについての記述が興味深く感じられた。

 しかし残念ながら、この本は何かの議論の立脚点にするにはあまりに弱すぎる(記述の信頼性のなさ)。もうちょっとちゃんとした本が別の人の手で書かれることを期待する。

1999/8/23

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