リンドバーグの世紀の犯罪

Crime of the Century: The Lindbergh Kidnapping Hoax

グレゴリー・アールグレン、スティーブン・モニアー / 朝日新聞社 / 96/03/05

★★★★

真相暴露ものの宿命としてうさんくさいが、これはほんものか?

 リンドバーグの息子の誘拐事件に関しては、犯人として逮捕され、処刑されたハウプトマンが無実だったのではないかということは、かれが処刑される前から言われていたが(そういえばクリフ・デ・ヤングがリンドバーグを、アンソニー・ホプキンスがハウプトマンを演じたTVムービーがあった)、この本は息子を殺害したのがリンドバーグ本人だったという仮説を述べている。

 この手の本のつねとして、この仮説の部分は、きわめて信憑性が高いように書かれている。そういう風に書かないと、この手の本の意味がないからである。残念ながら私には、この問題を大きな視野で論じるだけの材料の持ち合わせがないので、本書の内容を論評することはできないけれども、少しばかり本物っぽく思えるということだけ述べておこう。

 ちなみに、誘拐事件捜査を主導したニュージャージー州警察長官のH・ノーマン・シュワルツコフ大佐が、「砂漠の嵐」作戦のシュワルツコフ将軍の父親だった、というのが興味深い。

 まあ、リンドバーグの息子を殺したのがリンドバーグ本人だったのかという問題を措いといて、この本を読んで改めて思ったのは、リンドバーグという人間の興味深さである。この本の著者らが息子殺しとして指弾している(傍証的な)理由の一つは、彼が人格的な欠陥を抱えていたというところにある。人格だけでなく、第二次世界大戦中はナチス・ドイツと反ユダヤ主義を公然と支持したという思想上の問題も抱えていた。それが(この本によれば)戦後になっては、大西洋単独横断飛行と息子の誘拐という2つのイメージだけが残り、日本ではロック・グループの名前にまでなった。このイメージの変遷が、今後どのような道筋をたどるのか興味深い。あと、この本では妻のアン・リンドバーグが誘拐事件に関してどのような感想を抱いていたのかがわかりにくいので、そのあたりも知りたいところだ。

関連サイト

Lindbergh Case リンドバーグの息子の誘拐事件に関する網羅的な資料

FBIの公式見解 ハウプトマンの逮捕、処刑に到る経緯を"Famous Cases"の1つとして述べているページで、当然ながら彼が犯人であることをまったく疑っていない。

1998/4/10

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