グッドラック

戦闘妖精・雪風

神林長平 / 早川書房 / 99/05/15

★★

迷宮に入り込んで出られない

 神林長平を読むのは久しぶりだ。巻末の、ハヤカワ文庫に収録されている著作一覧を見ると、最後に読んだのは『プリズム』だったのかもしれない。『敵は海賊』シリーズは読むに耐えなかったし、それ以外のラインはちょっと立ち読みして買わないままできた。

 しかし、『戦闘妖精・雪風』はやっぱり面白かったわけで、その15年ぶりの続篇ということで買ってみたのだが……(『SFマガジン』に1992年から1999年にわたって掲載されたものらしい)。

 なんというか、「アニメの原作」という感じ。絵が出てきて、それがほとんど動かない。で、声優が変に激昂した声で延々としゃべる、と。1週間おきに放映されるから、前週の内容と少々だぶってもあまり問題ない。内容が無意味でも青臭くても問題ない。いやほんと驚いた。これでは『エヴァンゲリオン』のレベルではないか。

 著者は、主人公と雪風と地球外生物の「ジャム」という存在を通して何かが描けると思ったわけなんだが、それが何なのかよくわからないので堂々めぐりをする。その堂々めぐりをするところを見せる、という芸のあり方もあるけれども、その方向に進むにはお粗末だ。もしかしたら、私が読んでいた初期の作品と比べると、本人には「答え」に近づいたという感覚があるのかもしれない。だから、その芸を見せるという方向は捨てたのかもしれない(しかし単に力が落ちたと考えた方がよさそうな気もするが)。

 少なくともこの堂々めぐりの地点から一歩は先に進んでくれないと、SF小説としてはぜんぜん楽しめない。だって、谷甲州もいるわけだし、さらにいえばずっと前にレムがいたわけだから。いやほんとびっくりしました。

1999/9/2

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