Eyes of a Child

リチャード・ノース・パタースン / Ballantine Books / 95/01/01

★★★★★

やはり凄い

 リチャード・ノース・パタースンが1995年に書いた本。『罪の段階』の主人公だった弁護士Christopher Pagetとその助手のTerri Peraltaが主役級として登場する。『罪の段階』ではPagetとPeraltaの間にロマンス一歩前のような関係が生じていたが、この本ではPeraltaが夫のRicardoと離婚して、本格的にPagetの恋人となる。TerriとRicardoの間で、6歳の娘Elenaの養育権を巡る戦いが発生し、さらにPagetの息子CarloにElenaに対する性的虐待の疑惑が持ち上がり、大変なことになったところで、Ricardoが何者かに殺される。Pagetは殺人の罪に問われ、『罪の段階』の裁判官、いまでは弁護士になっているCaroline Mastersに弁護を依頼する。

 本書では、『罪の段階』で弁護士として活躍したChristopher Pagetが一転して刑事被告人となる。これまで弁護士として慣れ親しんできたプロセスすべてを被疑者、被告人の立場から体験するという心憎い設定で、この部分の描写が非常に面白い。また、Pagetは裁判での証言を拒否するのだが、その理由が最後まで明らかにされない。もちろんその理由はストーリーの鍵なのだけれども、これを伏せたままでの主観描写がきわめて巧妙だ。弁護人が、被告人が証言を拒否する裁判で弁護を行うというタイプのリーガル・サスペンスとしてもとても面白い。さらに、Christopher Pagetが証言を拒否することを決めているため、弁護士のCaroline Mastersも、恋人のTerri Peraltaも、さらには息子のCarlo Pagetでさえも、Christopher Pagetがほんとうに無実なのかどうか確信できないという仕掛けも成功している。

 しかし本書でなんといっても印象的なのは、例によってフラッシュバック手法で描かれる、TerriとRicardoの間の関係である。Ricardoはソシオパスなのだが、こんなに怖いソシオパスはなかなか他では見られないというぐらい迫力がある。しかも、彼がやっていたさまざまな仕掛けは、本人が死んだ後もPagetとTerriとCarloを苦しめるのである。

 裁判が終結を迎えたとき、ChristopherとTerriとCarloの間には、どう考えても修復不可能と思われる裂け目が生じている。この裂け目の哀しさは、"Silent Witness"のそれを超えて強烈で、よくもまあ父と子、あるいは恋人たちの間にこんな恐ろしい関係を作りえたものだと感心する。

 そういうわけで、やはりこの本もリーガル・サスペンスの最高傑作である。

1999/9/2

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