面白すぎる日記たち

逆説的日本語読本

鴨下信一 / 文藝春秋 / 99/05/20

★★★★★

日記に関するテキスト論的な考察

 主に近代日本の日記の断片を紹介して、それにテキスト論的な考察を加えていく本。新書版なので、1つの「考察」を支える資料が十分でなく、「考察」の部分もあまり深くは突き詰められていないが、その背後には十分なリサーチと思索があるということが見て取れる。この「見て取れる」というところが興味深い。そういうような印象を与えるテクニックというのはあるのだろうか(本当に十分なリサーチと思索がある、というケースを除いたとして)。

 内容に関しては、これまで日記という形態そのものにそれほど関心を抱いていなかったのが、一気に興味津々となった。それぐらい、この本はよく書かれているということだ。

 ちなみに、この「読書メモ」でこれまでに登場した日記というと

『チョコレート・ジャンキー』 web日記をベースにしたもの。

『農人日記』 「日記」の形式をとっているが、本当は商業誌向けのエッセイ。

『南京の真実』 公開を意図していない本物の日記。

『遠い崖』 他人の本物の日記をもとに、後世の人がノンフィクションとして再構成したもの。

 などがある。最近では『間違いだらけの少年H』を読んで、日記がいかに重要なものなのかということを改めて思った。歴史の修正を避け、見抜くための手段として、リアルタイムの日記は非常に有用である。本人でさえも、50年も経てば、その時代がどういう時代だったのかをすっかり忘れるのだから。私自身、たとえば80年代のバブルの時代に自分がどういう風に考えていたか、すでに確信が持てない。

1999/9/6

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