報道被害者と報道の自由

喜田村洋一 / 白水社 / 99/05/31

★★★★★

驚くほど明晰な本

 著者は三浦和義の弁護人だった弁護士(たぶんメディアに対する名誉毀損訴訟の方だと思う)。ミシガン大学のロースクールを出て、ニューヨーク州の弁護士の資格を持っている。

 報道の自由と名誉毀損という緊張関係について、アメリカと日本の判例を取り上げながら理論的に考察するという本で、いやあアメリカのロースクールを出るとこういう文章を書けるようになるのかというため息が出るような明晰な内容である。こういうレポートを書かされるんだろうな。三浦和義のケースについても詳しく説明していて面白い(と言える内容ではないが)。

 最後には、日本の司法制度に対するpolicy recommendationもあってきわめて生産的。「報道の自由」という問題について論じるときには必ず目を通しておくべき本といえると思う。

 大雑把にまとめると、アメリカでは公人と私人の違いで、報道された側と報道した側のどちらに有利な扱いになるかがはっきりと異なる。日本ではそういう区別をしていないため、一般に、報道された公人の方が報道側よりも有利になり、報道側の方が報道された私人よりも有利になるという、本来あるべき状態とは逆の状態になっている。

 なお、三浦和義については、無罪が確定して出所したときも、メディアが攻撃的な扱いをしていたことが印象に残った。ほんとどうしようもない人たちだ。

 河野義行氏の『「疑惑」は晴れようとも』『妻よ!』が報道被害者の立場からの本である。

1999/9/8

 本書で詳しく取り上げられている裁判を含めて、ラリー・フリントの生涯を扱った映画が『ラリー・フリント』である。残念ながらこの映画はオリヴァー・ストーン製作で、とてもつまらないものだった。

1999/10/29

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