家族が自殺に追い込まれるとき

鎌田慧 / 講談社 / 99/07/14

★★★

日本人の過労死に関するルポルタージュ

 現代日本人の過労死に関するルポルタージュ。普通のサラリーマンが過労のあまり自殺をしたというケースをいくつか取り上げ、労働基準監督署と労災保険の問題を指摘する。

 なお、国歌国旗法案の引き金になったとされる広島県の校長の自殺のケースも取り上げられている。このケースは非常に興味深い。この校長が自殺した原因は、推進派が述べていたような、県教育委員会と教員組合の間での板挟みというようなものではなく、県教育委員会の方針と自らの信念の間での板挟みだったようだ。要するに、上から自分の信念にそぐわない命令が下りてきたときに、それを適当にかわそうとしてかわしきれなかったということ。

 1990年に自殺した環境庁企画調整局長のケースでは、環境庁長官と環境庁の官僚の間で板挟みになるが、このケースでは自殺した局長は環境庁長官の側についていた。

 他のケースが、もっぱら仕事の量に負けて自殺を決心したのに対し、この2つのケースは「抗争」とでも言うべきものに巻き込まれて自殺に走ったという点で趣が違う。校長の場合は県教育委員会と教員組合、局長の場合は政治家と官僚のインターフェイスのところにいたために苦労したわけだ。

 教訓は、(1) 仕事は一所懸命にやるもんじゃない、(2) 校長と官僚にはなるもんじゃない、ということだろうか。

1999/9/14

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